2023年2月16日(木)

兄が恋人と婚約したと親戚に報告した日の夜だった。家族で秋葉原の騒がしい居酒屋に行った。喫煙可能な飲み屋なので、家族4人でそこ一帯が曇るほどの煙を吹かした。

兄は言った。「高校受験に失敗して、次こそはと思っていた大学受験にも失敗して浪人が決まったとき、3つ下のお前も高校受験があって、第一志望に受かっていたのが苦しかった。お前が高校生活を満喫しているのに俺は浪人だということがずっとしんどかった。気が狂うかと思っていた」

 

申し訳ないと思ったが、私は謝らなかった。今更なことだし、私の受験が成功したことが兄を追い詰めようとも、私は何も悪いことはしていない。それよりも、今度は私が現在進行形で、あなたとの生活の差で気が狂いそうになっているとは、やはり言えなかった。よかった、兄は稼ぎの良い大企業に就職できたのだから。よかった、兄は大事な人ができたのだから。学歴なんて関係ないのだ。結局は人柄なのだ。

 

生活を切り詰めているくせに、誘惑に負けて買ったチョコレートを食べながら「せっかくじゃがいもを100円で買えたのに、これじゃあプラマイゼロだな……」と思ったりしている。電気代節約のために暖房もつけていないが、電気毛布なら電気代がめちゃくちゃ安いという情報を仕入れた。でももうすぐ冬も終わるし、今更買うのもなぁと思いながら寒い夜を過ごし、いずれ春がやってくる。どうせ来シーズンになったら電気毛布のことなんか忘れてしまうのだろう。

安物買いの銭失いとはよく言ったもので、高くて丈夫なものを長く使うのが一番いいのだと分かっているのに、高いものを今買うお金がないので、仕方なく安いもので現状を維持し、買い直し、買い直し……の生活だ。「自炊のほうが安く済むと分かっているけど、自炊のための器具や調味料を買い揃える金がないからコンビニ弁当しかない」と、昔誰かから聞いた。私はコンビニ弁当で生活しているような感じだ。Amazonでテキトーに買ったコードレスのヘアアイロンは馬鹿くそ役に立たないし、通販で買った馬鹿安いコートはまだ2ヶ月くらいしか着ていないのにボタンが取れた。ニットもすぐ毛玉だらけになるし、その毛玉をとるために買った100円の毛玉取り機の性能はイマイチだ。ドンキのサイクロン掃除機も吸引力がすぐに死ぬので頻繁にフィルターを掃除しなければいけない。安い洗顔料で洗っていたら鼻の毛穴がすぐ詰まった。何もかも、上手くいっていない家に住んでいる。そういう環境にしたのは私だ。